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【不思議】11年目の宴

むかしむかし●●県の深い山々に囲まれた場所にある小さな村では、不思議な宴が催されていた。

村は土が良く作物がたいへん良く実り自給自足が成り立ち、外部との接触は鉄製品や生活用品を商う1人の行商人のみだった。

 

不思議な宴の話は、その行商人によりもたらされた嘘か本当かも分からない噂話だ。

 

村人曰く、この地で生まれ、この地で亡くなった者だけが「死後11年経った後に1日だけ蘇る」というのだ。

 

11年前の今日、村の若者であるカヨが亡くなったという。

 

 

村には「墓地」は存在せず、大木生い茂る深い森にポッカリ空いた洞穴に死に装束を整え化粧を施した彼女の亡骸を置いた。

 

家族は洞穴から戻り、11年間待ちカヨが蘇る日を待った。

 

そして彼女が死んだ11年後の今日、彼女の亡骸を置いた洞穴がある森の前に11歳を取った家族・友人・知人が集まり彼女が戻るのを待った。

 

周りの木々が風も無いのに騒めき、森全体を明るいが目の前から先が全く見えなくなる程の深い霧が徐々に立ち込め始める。

 

霧の中から人影が見え始め、死んだときのままの姿をしたカヨが現れた。

 

彼女は1日だけの仮初の命をその土地神より貰う契約をし、再び家族や友人知人、村の人々との再会を喜んだ。

 

再びこの世に戻ったカヨを村では土地神の使い「お使い様」として扱い、カヨを主役とした村総出で宴会を催した。

 

美味しいお酒やごちそうを振るまい、楽しげな笑い声や歌声が夜空に響き渡った。

 

宴が終わった翌日、徐々にカヨの体にはヒビのような模様が浮き始め、急速に体が朽ち果てていくのが分かる。

 

彼女は家族たちに別れの言葉とともに「私だったものを土地に蒔いて」と伝えた。

 

身体は砂の様にサラサラと崩れ始め、最後には手のひらに収まるくらいの灰のようなモノが残った。

 

村には再び静寂が広がり、宴の跡だけが残った。

 

家族はカヨだった灰のようなモノを集め果樹の根元にソレを埋めた。

 

数日後には秋にもかかわらず花が咲き、雪が降りすべてが閉ざされる直前に沢山の実をつけた。

 

もちろん過去によみがえった者の中には、畑や水田にまかれたものも居たらしい。

 

灰がまかれた土地は良く実り、飢饉の際にもその土地で育てられた作物は多くの実りを与え村を助けた。

 

しかし死者が11年後に1日だけ帰ってくるという不思議な奇跡を起こす村は、時代の流れ共に人が居なくなり過疎化が進み無くなってしまった。

 

今では形すら分からず森に飲まれて朽ち果てた家と、土地に力が無くなってしまったが故に僅かばかりに実をつけ動物に恵みを与える果樹だけがひっそりと存在している。

 

 

 

 

 

 

 

※全て嘘で全て偽

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