【オカルト】トンネルの中の「失せもの市場」
突如失せもの市場が現れたのは、とある都市の郊外に位置する古びたトンネル。
そのトンネルの前には、ある日突然、「新規開店」と立てかけられた看板が現れた。
このトンネルは古く薄暗いため、地元の人間でも徒歩では通らず、基本的には自動車専用だった。
看板は立てかけられているが、殆どの人間は素通りするか、何も見えていないように通り過ぎていた。
ただ、1~2人は看板が見え興味本位からトンネルを訪れる者もおり、トンネル内には豪奢な木造のドアが取り付けられていた。
中に入ると偏屈そうなお爺さんがパイプを咥えて雑誌を読んでいたらしい。
その店には名を示すものは何もなく、扱う商品は「失くした物」だったそうだ。並ぶ商品には名前が書かれた子供のおもちゃなども有ったという。
店に入った人の証言によれば並ぶ商品は驚くほど多岐にわたり、その中には通常の店では見かけないような奇妙な品もあったが、その中でも目に留まったのは祖母の遺品整理の際に捨てられないように寄せておいたものの間違って業者に捨てられてしまったアルバムだったそうだ。
何故個人の物が店に並んでいるのかを店主に聞いたが「思い入れがあるものだからだ」と一言つぶやいただけで、出所に関しては一切黙秘されたという。
買い物をする場合は貨幣は使えず、自分が持っている物、身に着けている物といった物々交換が基本で、アルバムの支払いには腕時計を指定されたそうだ。
腕時計は値の張るものだったがアルバムほど思い入れは無かったため、そのまま交換してアルバムを手に入れた。
店主は不気味なまでに静かに物々交換を行い、会計を終えると再びうまそうにパイプを咥えて雑誌を見始めたらしい。
噂を聞いた何人かの好奇心旺盛な者たちは、看板が外された後のトンネルに訪れたが扉すら発見することは出来なかった。
SNSで店を調べると、日本全国の寂れたトンネルに「新規開店」の看板が出されている事が分かったが、見つけられる人、見つけられない人が居るらしく、同じ場所に2人でいるのに片方は看板を見ることが出来なかったそうだ。
※全て嘘で全て偽