【魔術・占い】魔術書『ソロモンの小さな鍵』全5部の内容と特徴5選
『ソロモンの小さな鍵』（Lemegeton Clavicula Salomonis）は、中世ヨーロッパで編纂されたとされる魔術書だ。悪魔や天使、精霊を召喚するための儀式や護符の作成、契約の方法が詳細に記されている。この書物は単なるオカルト文献ではなく、当時の人々の知識欲や宗教観、さらには禁忌への好奇心が詰まった歴史的な資料でもある。この記事では、『ソロモンの小さな鍵』の成り立ちや背景、各章の詳細、現代への影響までを深掘りする。
1. 魔術書『ソロモンの小さな鍵』とは
『ソロモンの小さな鍵』は、古代イスラエルの賢王ソロモンが天使や悪魔を自在に操ったという伝説をもとにして生まれた魔術書だ。しかし、歴史的事実としては、17世紀のヨーロッパでラテン語やヘブライ語の文献を元に編纂されたと考えられている。
1.1 歴史的背景
- ソロモン王の伝説：ソロモン王は『旧約聖書』に登場し、神から知恵を授かったとされる。特に「ソロモンの指輪」によって天使や悪魔を従えたという逸話が有名だ。
- 中世の魔術ブーム：ルネサンス期のヨーロッパでは、神秘学や錬金術が流行し、古代の魔術書が再解釈された。
- 宗教改革の影響：カトリック教会による異端審問が行われる中、人々は公には禁じられた知識に強い興味を示していた。
1.2 魔術書の構成
- 五部構成：『ゴエティア』『テウルギア・ゴエティア』『アルマデル』『パウリナ』『ソロモンの術式』に分かれている。
- 目的：悪魔召喚、天使との交信、精霊の使役、知識の向上など。
- 象徴：護符や魔法陣、呪文が図解と共に記されている。
『ソロモンの小さな鍵』は、科学や宗教が交差する時代に生まれた「知の産物」とも言える。
2. 第一部：ゴエティア（Goetia）
『ゴエティア』は『ソロモンの小さな鍵』の中で最も有名であり、魔術書の代名詞として語られることも多い。この章には72柱の悪魔がリストアップされ、それぞれの悪魔の特徴や召喚手順が詳述されている。
2.1 ゴエティアの目的
- 悪魔召喚：特定の悪魔を呼び出し、知識や力、富を得る。
- 契約の手順：悪魔と契約し、意図せぬ災厄を避けるための方法。
- 護符と魔法陣：悪魔をコントロールするために必要なアイテムやシンボル。
2.2 代表的な悪魔
- バエル（Bael）：透明になる力を授ける。
- アスモデウス（Asmodeus）：情欲や富を司る。
- パイモン（Paimon）：高位の知識を持つ強力な悪魔。
2.3 実践と影響
『ゴエティア』は後世の魔術師や作家に強い影響を与えた。特にアレイスター・クロウリーは『ゴエティア』の英訳を手掛け、その影響力を現代にまで広げた。
3. 第二部：テウルギア・ゴエティア（Theurgia-Goetia）
『テウルギア・ゴエティア』では、悪魔ではなく天使や精霊との交信方法が解説されている。これは「白魔術」の要素が強く、神聖な力を得るための儀式が中心となっている。
3.1 テウルギア・ゴエティアの目的
- 精霊召喚：天使や精霊を呼び出し、知識や守護を授かる。
- 安全な儀式：悪魔召喚に比べてリスクが低い。
- 守護精霊：個人を守る精霊との契約。
3.2 精霊の分類
- 天界の精霊：神聖な力を持つ存在。
- 地上の精霊：自然や物質界を司る。
- 地下の精霊：隠された知識や富を司る。
3.3 テウルギアの実践
ルネサンス期の魔術師たちは、この章を特に重視した。特に神秘学者のジョン・ディーやエドワード・ケリーは、天使との交信を行い、多くの知識を得たとされている。
4. 第三部：アルマデル（Ars Almadel）
『アルマデル』は、天使召喚のための儀式を詳細に記述した部分だ。主に癒しや守護、神聖な知識を得ることが目的とされる。
4.1 儀式の手順
- アルマデルの板：特別な魔法陣が描かれた板を使用する。
- 祈祷と呪文：天使を呼び出すための聖なる言葉。
- 天使との交信：癒しや災厄回避に関する知識を授かる。
4.2 宗教との関係
『アルマデル』はキリスト教の要素が強く、祈祷や聖句が多用される。
5. 第四部：パウリナ（Ars Paulina）・第五部：ソロモンの術式（Ars Notoria）
『パウリナ』では天文学と魔術が融合し、星座や惑星に関連する天使を召喚する。一方、『ソロモンの術式』は学問や知識を高めるための魔術だ。
5.1 主な内容
- 天体魔術：天使と星座の関係。
- 知識の増幅：記憶力向上、瞬時の知識習得。
5.2 歴史的意義
これらは学者や錬金術師にとって、特に価値ある魔術書とされた。
まとめ
『ソロモンの小さな鍵』は、魔術書の中でも体系的で影響力のある書物だ。
五部それぞれが異なる目的と手法を持ち、悪魔召喚から天使との交信、知識の探求までを網羅している。この書物を理解することで、中世の魔術観や人々の知識欲が垣間見える。