【予言】災厄を予言する妖怪・件(くだん)の6つの記録をたどる
謎の妖怪「件」が予言するものとは?
「件(くだん)」という妖怪を知っているだろうか?
牛の体に人間の顔を持ち、生まれてすぐに喋り、災厄を予言して死ぬという不思議な存在だ。
江戸時代の文献や明治・大正の新聞、そして現代のSNSでも件の話はたびたび浮上する。この記事では、江戸から令和にかけて語り継がれた「件予言」の6つの記録を紹介する。
件予言1:江戸時代の初出記録とその背景
江戸時代後期、肥後国(現在の熊本県)で「件が出現し、疫病が流行ると予言した」という記録が残っている。
この件は「人の顔を持った牛」として描かれ、出現の翌年に実際にコレラが流行したとされる。
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出現時期:弘化2年(1845年)ごろ
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場所:肥後国
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予言内容:疫病の流行
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結果:コレラが発生し、多数の死者が出た
これは当時の瓦版(新聞のようなもの)にも掲載され、件という妖怪の存在を一気に広めた。
江戸の庶民にとって、災厄を知らせてくれる「半分神様のような存在」として信じられていたのだ。
件予言2:明治時代の新聞記事に登場
明治時代になると、文明開化により新聞というメディアが全国的に普及し、件の存在は再び脚光を浴びる。明治10年代のある新聞には、こう記されている。
「越後国にて、件なる獣が誕生し『まもなく戦争が起こる』と話して死す」
実際にその直後、日清戦争や日露戦争へと時代が進んでいくことから、「件の予言が的中した」と民衆の間で話題になった。
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時代背景:政情不安、近代戦争への緊張感
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件の登場は民衆の不安の象徴でもあった
新聞が「件」を真面目に取り上げていたことからも、当時の人々がそれを単なる噂話ではなく「信じる価値のある予言」として見ていたことがわかる。
件予言3:戦時中のプロパガンダとして利用
昭和時代、特に太平洋戦争中には、件の予言がプロパガンダとして利用されたという説もある。
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目的:国民の士気を高める
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内容:「件が現れた。戦は苦しいが最後には勝つ」と予言
この予言は戦局が厳しくなるにつれて、「希望を持て」という国の思惑と結びつき、新聞やビラに描かれた件が国民に配布されたという報告もある。
つまり、件は「予言者」から「精神的支え」へと役割を変えたのだ。
件予言4:平成期のUFOブームと再登場
平成になると、オカルトブームやUFO特番などの影響で件が再び注目される。
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1990年代のテレビ番組にて「件が見た未来」という特集が放送
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内容:「未来に大震災が起きる」といった話が拡散
中には「阪神・淡路大震災」や「東日本大震災」も、件の予言として語られることがある。
実際にそのような文書が残っているわけではないが、「後からそう語られる」という点が重要で、件という存在がいかに現代人の不安と結びついているかがわかる。
件予言5:令和期のSNSによる拡散
令和に入り、TwitterやYouTubeなどのSNSで「件が見た未来」という投稿がバズるようになった。
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内容:「2020年以降に大災害が起きる」
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実際:新型コロナウイルスの流行と一致
たとえば、2020年1月ごろ「件の予言がまた当たった」として話題になったツイートには数万のリツイートがつき、メディアでも報道された。
SNSでは画像生成ツールを使って件の姿を再現する人も多く、令和の「デジタル妖怪」としても生き続けている。
件予言6:件の正体と人間心理の関係
なぜ件という存在が、時代を超えて語られ続けるのか?
それは、人々の不安や恐怖に「理由」や「意味」を与えてくれるからだ。
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災害の予兆を可視化できる
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無力感を「理解」へと変える
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不安を語り合う道具として機能
件は物理的な存在ではなく、心の中の不安に姿を与えた「集合的なイメージ」と言えるだろう。
江戸の庶民から現代のネットユーザーまで、件はいつの時代も「未来の予言者」として必要とされているのだ。
まとめ:件は災厄の象徴であり人の心の鏡
件の予言は、実際に的中したものもあれば、後付け解釈されたものもある。
しかし、件が語り継がれてきた背景には、「人は常に未来を知りたがる」という普遍的な心理がある。
時代が変わっても、件のような存在はきっと新たな形で現れるだろう。
それが人形かAIか、あるいはまた牛の体に人の顔を持つ異形のものかは、誰にもわからない。